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2026.09.27
コラム
【獣医師が解説】獣医師が解説、犬猫のケアで注目したい「マヌカハニー」とは?特徴から皮膚・お口との関係まで

近年、人の健康食品だけでなく、スキンケアや創傷ケア、さらには犬や猫のケア用品でも「マヌカハニー」という言葉を目にする機会が増えてきました。

一般的なはちみつと何が違うのか、「MGO」や「UMF」という数字にはどんな意味があるのか。そして、犬や猫の皮膚やお口のケアについて、実際にどこまで研究されているのでしょうか。

今回は獣医師の立場から、現在分かっている研究結果や小動物特有の生理学的背景も踏まえてマヌカハニーについて解説します。

今回のコラム監修者を紹介
著者のプロフィール画像

獣医師 森田 慶先生

獣医フリーランス協会 代表理事、株式会社Anicure/Anicure動物病院 取締役、東京動物皮膚科センター 歯科主任、特定非営利活動法人ペット災害危機管理士会 理事を務める。ペットスキンケアブランドMalukeの製品開発にも協力。

マヌカハニーとは?普通のはちみつと何が違う?

マヌカハニーとは、主にニュージーランドに自生するマヌカ(Leptospermum scoparium)の花蜜から作られるはちみつです。

ニュージーランドでは「マヌカハニー」として輸出するための厳格な科学的基準が第一次産業省(MPI)により定められており、4種類の化学マーカーとマヌカ花粉由来のDNAマーカーを組み合わせて真正性を判定しています。

そもそも、はちみつには高い糖濃度による浸透圧、弱酸性環境、過酸化水素、ポリフェノール化合物など、微生物の増殖を抑える複数の要素があります。

その中でもマヌカハニーの最大の特徴として注目されているのが、MGO(メチルグリオキサール)を比較的高濃度に含むことです。一般的なはちみつの抗菌活性が熱や体内酵素(カタラーゼ)で分解されやすい過酸化水素に依存しているのに対し、MGOは分解されにくく、安定した「非過酸化物性(Non-Peroxide Activity)」の抗菌作用を発揮します。

こうした特徴から、単なる食品にとどまらず、創傷管理などの医療分野でも広く研究されてきました。

獣医師から見た、マヌカハニーの注目ポイント

私が獣医師としてマヌカハニーに注目している理由は、「天然成分だから安全」といった漠然としたイメージではありません。

天然由来の素材でありながら、MGOをはじめとする主要成分を数値化し、品質が規格化された原料として科学的研究の対象になっている点にあります。

獣医療の領域でも、医療用ハチミツを用いた臨床研究が報告されています。

例えば、犬の感染性外耳炎15例を対象としたパイロット研究では、医療用ハチミツ製剤の外用により、臨床症状や耳垢細胞診における細菌スコアの有意な改善が報告されています。
また、犬猫の難治性創傷から分離されたStaphylococcus pseudintermedius(犬ブドウ球菌)やPseudomonas aeruginosa(緑膿菌)などの主要な病原菌に対し、医療用ハチミツ製剤が高い抗菌活性を示したin vitro(試験管内)研究も報告されています。

一方で、「どんな皮膚トラブルにも効く万能薬」ではありません。

短頭種の鼻のしわに生じる間擦性皮膚炎(鼻皺皮膚炎)を対象にした無作為化比較試験(RCT)では、医療用マヌカハニーは対照群(ハイドロゲル)を上回る優位性を示せなかったというネガティブデータも報告されています。

このように、「マヌカハニーだから効く」と短絡的に捉えるのではなく、どのような病態に対し、どのような製剤設計で使用されているかを冷静に見極める必要があります。

マヌカハニーと犬・猫のケア

●皮膚・創傷のケア

マヌカハニーに関して最もエビデンスが蓄積しているのが創傷・組織管理の分野です。

ただし、医療現場で使用されるのは一般的な食品用はちみつではなく、微生物学的な安全性や純度が厳格に管理された「医療用ハチミツ(Medical Grade Honey)」です。

ここには獣医学的に極めて重要な理由があります。

食品用のはちみつには、土壌由来のボツリヌス菌(Clostridium botulinum)の芽胞が微量に混入しているリスクが否定できません。
健常な成犬であれば腸内細菌叢により発症リスクは低いものの、組織が露出した開放創への塗布や、消化器・免疫バリアが未熟な子犬・子猫への使用はリスクを伴います。

医療用ハチミツはガンマ線照射などによって芽胞を不活化(滅菌処理)しており、「食品用のマヌカハニーを自己判断で愛犬・愛猫の傷口に塗る」ことは絶対に避けるべきです。

犬や猫の皮膚トラブルでは、適切な基礎疾患の診断(アレルギー、内分泌疾患、外部寄生虫など)を前提とした上で、スキンケア製品としてのマヌカハニーを補助的選択肢の一つとして捉えるのが賢明です。

●お口のケア

人の歯科領域では、マヌカハニーが一部の歯周病原細菌(Porphyromonas gingivalisなど)に対して抗菌活性を示すことや、機械的清掃(スケーリング等)の補助として用いた際にプラーク指数や歯周ポケット深度の改善に寄与したとする臨床研究が報告されています。

ただし、これらの多くは人を対象としたデータです。犬や猫において、「マヌカハニーを塗ることで歯磨きや歯石除去の代わりになる」というエビデンスは現時点で存在しません。

また、口腔環境における生理学的違いにも注意が必要です。

人は口腔内が弱酸性に傾きやすく「う蝕(虫歯)」が発生しやすいのに対し、犬猫の唾液はpHが約7.5〜8.5と弱アルカリ性でアミラーゼ(糖質分解酵素)を含まないため、構造的に虫歯にはなりにくいとされています。その代わり、犬猫は歯垢がアルカリ性環境下で数日で歯石化し、歯周病へと急速に進行しやすい特徴があります。

はちみつそのものは高濃度の糖質を含むため、未加工のはちみつを原液のまま口腔内にとどめると、余分なカロリー過多や口腔内環境の乱れにつながる懸念もあります。

したがって、お口のケアにおいては原液をそのまま塗るのではなく、「犬猫の口腔環境に配慮して設計されたデンタル製品の中で、どのような配合比・基剤として活用されているか」を確認することが大切です。
犬猫のデンタルケアの基本は、あくまで歯ブラシによる物理的なプラークの除去と動物病院での定期的な歯科検診・処置であり、機能性成分はその土台を補佐するものと位置づけるべきです。

マヌカハニーを特徴づける「MGO」とは?

前述したMGOとは「メチルグリオキサール(Methylglyoxal)」の略称です。

マヌカの花蜜には、MGOの前駆物質であるDHA(ジヒドロキシアセトン)が豊富に含まれています。花蜜の段階ではMGOはほとんど存在せず、巣箱の中で貯蔵・熟成されていく過程で、DHAが化学反応を起こしてMGOへと徐々に変換されていきます。

MGOはマヌカハニー独自の抗菌活性を担う中心物質であり、ラベルに表示される「MGO 250+」などの数値は、はちみつ1kg中に含まれるMGOの重量(mg/kg)を示しています。当然、数値が大きいほどMGO濃度は高くなります。

ただし、「MGOの数値が高いほど、犬猫のケア製品として優れている」とは限りません。

最終製品におけるマヌカハニーの実際の配合割合、基剤中での有効成分の安定性、皮膚や粘膜に付着・接触する時間、そして刺激性の有無など、製品全体のバランスこそが実際の使用感を左右します。
近年も犬猫の創傷由来菌に対する抗菌感受性試験や熱傷症例報告など研究が進められていますが、数値の過信には注意が必要です。

「MGO」「UMF」の数字はどう見ればいい?

マヌカハニー関連製品には、「MGO」とともに「UMF」という規格が表示されていることがよくあります。

  • MGO:前述の通り、メチルグリオキサールの「絶対的な含有濃度(mg/kg)」を示す数値。
  • UMF(Unique Mānuka Factor):ニュージーランドの認証機関「UMF蜂蜜協会(UMFHA)」が運用する総合的な品質格付け基準。

UMF認証ではMGOの含有量だけでなく、真正性の指標となるLeptosperin(レプトスペリン)、将来的な活性に関わる前駆物質DHA、加熱変性や鮮度低下を示すHMF(ヒドロキシメチルフルフラール)の4項目が総合的に検査されます。

現在、UMF協会が定めている最低保証基準の目安は以下の通りです。

  • UMF 5+ :MGO 83 mg/kg 以上
  • UMF 10+:MGO 263 mg/kg 以上
  • UMF 15+:MGO 514 mg/kg 以上
  • UMF 20+:MGO 829 mg/kg 以上
  • UMF 25+:MGO 1200 mg/kg 以上

ここで押さえておきたいのは、UMFやMGOはあくまで「原料となるマヌカハニーの規格」であり、「UMF 20の製品がUMF 10の製品より犬の皮膚に対して2倍の効果を発揮する」といった短絡的な比例関係は成り立たないという点です。
また、ニュージーランド政府(MPI)が義務付けている「輸出基準(DNAや4つの化学マーカー)」と、民間団体の「UMF格付け」は別の枠組みであることも知っておくと、製品情報を冷静に読み解く助けになります。

Malukeマヌカハニー配合製品こちら
商品1の商品画像

マヌカスキンクリーム

マヌカハニーを贅沢に配合した、全身に使える保湿&保護クリーム。肉球や鼻、ひじ、お腹など、乾燥や荒れが気になる部分にうるおいを与え、すこやかな皮膚環境へ導きます。

商品2の商品画像

マヌカハニースキンケアシャンプー&トリートメント

洗浄だけを目的とするのではなく、皮膚環境をすこやかに保つことに着目した成分を配合。皮膚ケアに特化したスキンケアシャンプー&トリートメントです。

マヌカハニー配合製品を選ぶときのチェックポイント

愛犬・愛猫のためのケア製品を検討する際は、以下の視点を持つことをおすすめします。

●食品用はちみつを創傷に代用しない
前述の通り、食品用マヌカハニーは非滅菌でありボツリヌス芽胞等のリスクを排除できません。自己判断で家庭の食品を傷口や重度の皮膚炎部位に塗りつけるような使い方は厳禁です。

●「MGOの高さ」だけでなく「製品中の配合量」を確認する
高グレード(高MGO)のマヌカハニーを使用していても、製品全体の中でごく微量しか配合されていなければ、原料のポテンシャルを十分に活かせません。配合順位やコンセプトを確かめることが重要です。

●基剤の設計と滞留性・使用感を見る
皮膚用製品であれば、被毛に邪魔されずに皮膚表面に密着・保湿し続けられるか、べたつきすぎて砂やゴミを吸着しないかといった製剤設計が大切です。

●誤飲・舐化(グルーミング)を前提とした安全性
犬猫のケア用品は、塗布後に本人が舐めてしまうことが日常茶飯事です。
特に猫は被毛の手入れによる経口摂取量が多くなる上、完全肉食動物として糖代謝機能が犬とは異なります。舐めても内臓に過度な負担をかけない成分構成になっているか、不要な合成着香料・保存料が含まれていないかを確認しましょう。

まとめ|獣医師が考えるペットケアとマヌカハニー

マヌカハニーは、「天然だから優しそう」という感覚的な枠を超え、MGOをはじめとする活性成分が科学的に特定・数値化されている非常に興味深い素材です。

しかし、小動物臨床におけるエビデンスは現在進行形で蓄積されている途上であり、人の研究結果をそのまま犬や猫に直結させることはできません。

獣医療の基本は、皮膚であれば適切な診断と保清・バリア機能の維持、口腔であれば歯ブラシによる日々の物理的なプラークコントロールと定期的なプロフェッショナルケアです。

マヌカハニーを「それだけでトラブルを魔法のように治す成分」と過信せず、確かな設計思想で作られた良質な製品を、日々の正しいケアを後押しする頼もしいパートナー(補助的選択肢)として上手に活用していく視点が大切です。

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